<クローズアップ2008>ビール類出荷、サントリー3位浮上 節約志向とらえ 毎日jp
<クローズアップ2008>ビール類出荷、サントリー3位浮上 節約志向とらえ
2008年7月11日(金)13:00
◇6本で17円差、価格据え置き効果
今年上半期のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)出荷量で、サントリーがサッポロビー ルを抜き初めて3位に浮上した。食品価格の値上がりが相次ぐなか、アサヒビール、キリンビール、サッポロの大手他社が値上げに踏み切ったのに対し、サント リーは価格を据え置き、節約志向を強める消費者の心をつかんだ。ビール市場は人口減少や高齢化に伴う飲酒量の減少で、94年をピークに縮小傾向にある。需 要期の夏を迎え、ビール各社はシェア競争にしのぎを削る一方で、厳しい生き残り策の模索を強いられている。【望月麻紀、森禎行】
◇サッポロ、ブランド確立できず
東京都内のスーパーマーケット。酒類売り場に「第3のビール」がずらりと並ぶ。サントリー「金麦」は6本で607円。サッポロ「ドラフトワン」などは6本で624円。その差はわずか17円。しかし、販売担当者は「売れ行きを決めるのは安さ」と言い切った。
食品値上げが相次ぎ、消費者の財布のひもは固い。アサヒ、キリン、サッポロの3社が原材料高で4月までに値上げに踏み切る中、サントリーは年間出荷量のほぼ5割が集中する4月から8月末まで、缶入り商品の価格据え置きを決めた。
350ミリリットル缶でビールより約50円安いのが発泡酒、さらに20〜30円安いのが第3のビール。上半期は第3のビールに人気が集まり、出荷量は前年同期比7・2%増。サントリー製品は同37・4%増と突出した伸びだった。
しかし、サントリーのビール事業は1963年の参入以来、赤字続きだ。佐治信忠社長は「シェア25%を目指さなければ、安定した利益を得られない」と黒字 化よりもシェア優先の構え。中元商戦に投じた広告は前年の2倍の量に達し、高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」の販売は上半期、サッポロの収益を支える 高級ビール「エビス」シリーズを初めて上回った。
他社からは「株主に配慮して利益を重視するなら、値上げせざるを得ない。価格据え置きは、株式を上場していないサントリーだからできる」(幹部)と反発も出ている。サントリーは9月に値上げする予定で、シェアへの一定の影響は避けられないとみられる。
サッポロは03年にドラフトワンを発売し、第3のビール市場を開拓したが、シェアはじり貧状態。みずほ証券の佐治広シニアアナリストは「低価格分野で、強力な商品を育てられず、ブランドを確立できなかったことが敗因」と分析する。
◇市場縮小、多角化加速
ビール市場は人口減少、高齢化のほか焼酎人気による若者のビール離れなどで、縮小が進んでいる。沖縄を拠点とするオリオンビールを含めた5社の、ビール類 の上半期出荷量合計は、前年同期比4・2%減の2億1673万ケース(1ケースは大びん20本換算)と、現行統計が始まった92年以降、最低を記録。業界 では生き残りをかけた多角化や、海外展開を狙ったM&A(企業の合併・買収)が加速している。
キリンの親会社、キリンホールディングス(HD)は協和発酵を買収して医薬品部門を強化。豪乳業大手のナショナルフーズも傘下に収め、総合食品企業への脱皮を図る。
アサヒも、カゴメと資本・業務提携に踏み切り、飲料部門を拡充したほか、ベビーフード大手の和光堂も子会社にした。アサヒはシェア首位の原動力となった 「スーパードライ」への依存体質を変える考えで、荻田伍(ひとし)社長は「国内酒類事業を伸ばしつつ、構成比を低くしたい」と話す。
一 方、サッポロはこうした動きに出遅れている。親会社のサッポロHDの連結営業利益に占める国内酒類事業の割合は07年度で約40%。サントリーを除く上場 3社の中では最も低く、東京の一大名所となった「恵比寿ガーデンプレイス」などの不動産事業の約45%を下回る。「安定した不動産収入が、サッポロの危機 感を失わせている」(流通関係者)との見方が根強い。
しかし、サッポロHD株は、筆頭株主の米国系投資会社スティール・パートナーズが 19%を保有。買い増しを計画し、8日には「サッポロのブランド力はほとんど生かされていない」と、経営陣の責任を追及する書面を送りつけ、揺さぶりをか ける。スティール社のサッポロ株の売却先次第では、ライバル社との統合など業界再編につながる可能性もある。
◇63年5社体制に
日本のビール市場は明治時代に勃興(ぼっこう)期を迎え、当時も現在と同じように、札幌、日本、大阪、麒麟(きりん)の4大ビールメーカーが激しく競い合った。
1906年に札幌、日本、大阪の3社が合併し、シェア約7割を占める大日本麦酒が誕生。45年の終戦まで同社と麒麟の大手2社体制が続いたが、過度経済力 集中排除法の適用を受け、49年、大日本麦酒は主に東日本地域を地盤とする日本麦酒(サッポロビールの前身)と西日本の朝日麦酒(アサヒビールの前身)に 分割された。
57年には沖縄ビール(オリオンビールの前身)が設立され、63年にはサントリーが参入。5社体制になった。
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■ことば
◇第3のビール
ビール風アルコール飲料の総称。主原料に麦芽を使わない「その他の醸造酒」と、発泡酒に別のアルコールを混ぜた「リキュール」がある。酒税は1缶350ミ リリットル当たり28円で、ビールの77円、発泡酒の47円に比べて安い。03年の酒税法改正で発泡酒の税率が引き上げられ、ビール各社がビール、発泡酒 のいずれにも属さない低価格飲料として開発した。
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